レディ・スタート・ダッシュ!
察しの良い方はもう気付いたかもしれないが、今回は『ミュージカルテニスの王子様 全国大会準々決勝 青学vs氷帝』で披露された青学の新曲、「レディ・スタート・ダッシュ!」についての考察をつらつらと書き留めていく。
始めに「レディ・スタート・ダッシュ!」の考察をすると言っておきながら、その前に「忘れ得ぬ戦い」についても考察しておきたい。
「忘れ得ぬ戦い」、きっとこの曲はどんな思いで氷帝学園が青春学園に相対するのか、青春学園がどのようにここまで勝ち進んできたのか、を表現するためのものであると考える。
しかし、それだけではないように感じる。
今回の公演では、青学10代目が公演を行った。フィーチャリングで出演した比嘉中が相対したのは青学9代目であり、氷帝学園が関東大会を戦ったのは青学8代目であった。
奇跡的に、テニミュ3rdシーズンを駆け抜けた青学がそれぞれ異なるのだ。
つまり、「忘れ得ぬ戦い」、対戦校のキャストそれぞれが互いに戦った青学8代目・9代目に想いを馳せる戦いなのかもしれない。青学10代目にとっても、客席から観た戦う先輩の姿が「忘れ得ぬ戦い」として存在しているのかもしれない。
長々と「忘れ得ぬ戦い」について考察してしまったが、ここから本題の「レディ・スタート・ダッシュ!」の考察である。
1番、私が感動したのが座右の銘のようなものを1人ずつ言っていくフレーズである。
また長くなってしまうが、一人一人の座右の銘を考察したい。
「猪突猛進」…1つのことに向かって、向こう見ずに猛烈な勢いで突き進むこと
彼は全国氷帝戦で肩が完治し、九州から戻ってきている。彼の眼中にはもう全国優勝しかないのかもしれない。全国優勝のためにあとは突き進むだけだ、という意味であると考える。
「油断大敵」…油断は物事の失敗の元で、大きな敵であること
通常なら部長である手塚が言いそうなことである。しかし、手塚が肩の治療のため試合を欠場していた間、部長の役を担っていたのが彼であった。そのため、彼には副部長でありながらも部長の意思が強く受け継がれているためこの座右の銘である、と考える。
「臥薪嘗胆」…仇を晴らそうと長い間苦心・苦労を重ねること
この座右の銘はなかなかに謎であった。
比嘉公演で橘と対戦し、練習を重ねる描写はあったもののまだ彼はシングルスでは負けていない。にもかかわらず、仇を晴らす…?四天宝寺戦への布石だろうか、と考えたが、自分の考えでは、関東立海戦で負けてしまった後輩2人へのメッセージではないか、と。事実、「敗北を無駄にするな」と歌っている。海堂と桃城のダブルスの敗戦を先輩として鼓舞しているのでは、と考える。
「覆水盆にもう一度返しちゃいましょ」…「覆水盆に返らず」は一度起きてしまったことは二度と元に戻らないの意。そのため、一度起きてしまったことをもう一度元に戻すという意味である
比嘉戦での、ダブルスパートナーである大石の手首の怪我が完治していなかったため欠場を余儀なくされ、シングルスで挑んだ彼。ダブルスはもうやらない、と言って始めた甲斐との試合もダブルスの方が楽しい、と再認識し、またダブルスをしよう、と言った彼らしい座右の銘である、と考える。
「心機一転」…ある動機からすっかり心持の変わること
この座右の銘を考えるにあたり、関東氷帝公演まで遡った。関東氷帝公演で、手塚と対戦する彼は彼自身の努力の賜物で、データとパワーに磨きがかかったとして自信に満ち溢れていた。しかし、手塚自身も進化を遂げており、敗北を期してしまう。そこから、彼は心新たに努力を重ねていったためこの座右の銘である、と考える。
「四面楚歌」…助けがなく、まわりが敵・反対者ばかりであること
穏やかで多くの人に慕われている彼が四面楚歌、とは意外であった。しかし、そんな彼がシングルスで戦う時の対戦相手の多くがパワー自慢である。菊丸が言っていたようにシングルスが孤独であるとするなら、自分以外にこの対戦相手と戦える人が青学にいないと考えるとますます孤独感が増していく。さらに彼は人一倍自己犠牲精神が強いため、このような座右の銘になったのでは、と考える。
「呉越同舟」…仲の悪い者同士が同じ場所に居合わせること。また、敵味方が共通の困難や利害に対して協力すること
正直1番エモい……。彼が同学年の桃城と犬猿の仲なのは周知の事実だと思うが、彼と桃城はライバルでありながらお互いを高め合える関係である。事実、全国氷帝戦で桃城が敗北を期した時も人一倍燃えた男というのが彼であった。そのため、いつも仲違いしていても同じ目標に向かい戦う仲間として、の意があると考える。
「あいつらに骨折り損をさせてやろうぜ」…「骨折り損」とは、苦心して力を尽くしたのにそれが無駄になること
何とも、青学1のくせ者と言われるだけの男である。関東氷帝戦で敗北した氷帝学園が満を持して全国大会に挑んできている。その裏にはきっと計り知れない努力があると思う。その計り知れない努力を自分達、青学に再度負けることで無駄にしてしまおう、という意であると考える。
「サムライ魂」…高潔で誇り高く、何者にも屈しない強い意思と、穢れることのない心を併せ持つ、極めて純粋な想いのこと
あの手塚を下した跡部との対戦であるにもかかわらず、恐れることなく挑み、勝利だけを追い求める彼らしい座右の銘である、と考える。
ここまで長々と書いてしまった。
最後になるが、「レディ・スタート・ダッシュ!」で彼等、青学10代目の爽やかな始まりを感じることができた。「スマイル・アンド・ティアズ」で「スタートラインを引いたあの時、ゴールは想像しなかった」という歌詞がある。
彼等はまだ始まったばかりである。
しかし、彼等のゴールは着実に近付いている。
全国大会準々決勝、全国大会準決勝、全国大会決勝。
青学10代目が青学として優勝するその日まで、私は応援し続けたい。